【研究】さらに[The Lady Is a Tramp]について この曲には四番まで歌詞がある。しかし実際には二番以下はあまり歌われていない。《Ella in Berlin》のエラはヴァース、一番、四番と歌っているが、二、三番は省いている。次に、参考までに二、三、四番の歌詞とその訳を記してみよう。
[’Way Down Yonder in New Orleans]’Way Down Yonder in New Orleans これはヘンリー・クリーマー作詞、J・ターナー・レイトン作曲の’22年の作品で、同年のレヴュー【Spice of1922】に使われた曲だ。映画には『The Story of Vernon Castle and Irene Castle』(RKO, ’39)、『Is Everybody Happy』(Columbia, ’43)、『Somebody Loves Me』(Paramount, ’51)、『The Gene Krupa Story』(Columbia, ’59)などに使われている。
[’Tis Autumn]’Tis Autumn ヘンリィ・ニーモが’41年に作った曲で、ミュージカルや映画とは関係なくつくられている。スタンダード曲のなかでもあまり目立たない地味な曲だが、面白い楽しい歌詞で通には好まれている歌だ。
[’Tain’t Nobody’s Biz-ness If I Do]’Tain’t Nobody’s Biz-ness If I Do これはポーター・グレインジャー、グレアム・プリンス Graham Prince、クラレンス・ウィリアムズ作で1922年につくられ、最初はアナ・マイヤーズ Anna Meyers の歌とオリジナル・メンフィス・ファイヴ Original Memphis Five の演奏のレコードが出された。
[’S Wonderful]’S Wonderful ガーシュウィン兄弟の作で’27年のミュージカル【Funny Face】に挿入使用された曲である。そのなかではアレン・カーンズ Allen Kearns とアデール・アステアによって歌われた。
[’Round Midnight]’Round Midnight これは大変有名になったジャズの名曲で、あえてスタンダードなどと言う必要がないような、そんな曲である。ただ20世紀末にディクスター・ゴードン主演の映画『ラウンド・ミッドナイト』の主題歌としてまた少し人気が上がったのはいいとしても、若い人たちが「あの曲は古い曲なんだそうですね?」などと言うのには、私などびっくりさせられる。まあ時の流れとはそういうものだから、仕方のないことではある。
[’Deed I Do]’Deed I Do これはウォルター・ハーシュ作詞、フレッド・ロウズ作曲で1926年につくられた曲だ。ベン・バーニィのオーケストラが吹き込んだものが最初のレコードで、べン・ポラックほか多くの楽団が吹き込んでいる。
[Zing! Went the Strings of My Heart]Zing! Went the Strings of My Heart これは’35年にジェイムズ・ハンレイが作詞、作曲した曲で、同年のミュージカル【Thumbs Up】に挿入使用された。そのなかではハル・リーロイ Hal LeRoy とユーニス・ヒーリィ Eunice Healy がこの曲を歌っている。
[You’ve Got a Friend]You’ve Got a Friend これはキャロル・キングが作詞も作曲もした’71年の作品だ。’70年代のロック・フュージョン・ブームの先鞭を切った曲と言えるし、新しい時代、新しい世代の歌としてジャズ歌手も多く歌っている曲だ。
[You’ve Changed]You’ve Changed ビル・ケアリィ作詞、カール・フィッシャー作曲による1942年の曲で、ミュージカル、映画とは関係ない。ハリー・ジェイムズ楽団でディック・ヘイムズ歌のものが売れてやや有名になった。