[’Round Midnight]’Round Midnight これは大変有名になったジャズの名曲で、あえてスタンダードなどと言う必要がないような、そんな曲である。ただ20世紀末にディクスター・ゴードン主演の映画『ラウンド・ミッドナイト』の主題歌としてまた少し人気が上がったのはいいとしても、若い人たちが「あの曲は古い曲なんだそうですね?」などと言うのには、私などびっくりさせられる。まあ時の流れとはそういうものだから、仕方のないことではある。
[You’re My Thrill]You’re My Thrill スィドニィ・クレアとジェイ・ゴーニィが1933年の映画『Jimmy and Sally』のために作った曲で、あまり華麗なメロディには聞こえないものの、渋い味わいの動きを見せるメロディだ。マイナーだがあまり暗い雰囲気はない。この映画はコメディだが、「この曲が一番大きなハイライトだ」などと解説してあり、ほかにあまり特筆すべき所はなかったようだ。
[You Turned the Tables on Me]You Turned the Tables on Me 1936年の映画『Sing, Baby, Sing』にスィドニー・D・ミチェルとルイス・オールターの二人が書いた曲だ。その映画に主演したアリス・フェイ Alice Faye が歌ったレコードがかなりのヒットになり、南アフリカ出身の音楽評論家で’66年からイギリスの Sunday Express 紙の記者、コラムニストを30年間もやっていたクライヴ・ハーシュホーン Clive Hirschhorn (1940–)は〝彼女のベスト作品の一つ〞と評している。
[You and the Night and the Music]You and the Night and the Music ヴァースの部分は大変訳しにくい。Song is in the air などという文章は意味は易しいがぴったりとした日本文はなかなか見つからない。そのあとの telling us romance is ours to share も同様だ。コーラスに入ってもやはり訳しにくいことに変わりない。こうなると、意味を解するということと、訳文を作るということは、まったくべつのことになってしまうので、また厄介だ。
[Where or When]Where or When 1937年のロジャーズ/ハートのミューズィカル【Babes in Arms】に挿入されたもので、舞台ではレイ・ヘザートン Ray Heatherton 扮する Valentine LaMar とミツィ・グリーン Mitzi Gree 扮する Billie Smith によって歌われた。ある日ヴォードヴィルの芸人夫婦の子であるヴァルは、両親が5ヶ月のヴォードヴィル・ツァーに出かけたあと、家の玄関にヒッチハイカーのビリーがいるのを目にする。
[What’s New?]What’s New? ビング・クロズビィの弟のボブ・クロズビィ率いる《Bob Cats ボブ・キャッツ》というバンドで長年ベースを弾いていたボブ・ハガートの書いた曲で、あとからバークが歌詞をつけたものである。ハガートはクロズビィのバンドに最後までいて、多くの曲ならびに編曲を提供している。
[Try a Little Tenderness]Try a Little Tenderness この曲はそれほど知名度があるとは言えないが、根強い人気をもっている曲で、ウッズ、キャンベル、コネリーの共作という形で1932年に作られている。この三人はいずれも作詞と作曲の両方をやるが、キャンベルとコネリーは二人で組んで作詞している曲が多く、ウッズは作曲が本業のようだ。
[Time After Time]Time After Time この曲は1947年の映画『It Happened in Brooklyn』のなかでシナトラによって歌われたが、当時ジミー・ドースィ、トミー・ドースィ、テディ・ウィルソンのそれぞれのオーケストラでレコーディングされ、以後多くの人に歌われて、今はもうお馴染みの曲になっている。
[Summertime]Summertime ジョージ・ガーシュウィンが1935年に書いたフォーク・オペラ【Porgy and Bess ポーギィとベス】のなかの曲で、作詞はデュボウス・ヘイワードによっている。【ポーギィとベス】は、デュボウス・ヘイワードの書いた’25年の小説《ボーギィ》基に、ヘイワードが台本を書き、作詞はヘイワードとアイラ・ガーシュウィンが分担して当たった。
[Stranger in Paradise]Stranger in Paradise ロバート・C・ライトとジョージ・フォレストのコンビで作られた’53年のミューズィカル【Kismet キズメト】のなかの曲で、ロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディン Alexander Borodin (1833–1887)の[Polovtsian dances ポロフツ人の踊り]の主題をもとにしている。オリジナル・キャストではリチャード・カイリー Richard Kiley とドレタ・モロウ Doretta Morrow が歌っていて、’55年の映画版ではヴィク・ダモン Vic Damone とアン・ブライズ Ann Blyth が歌った。